スイム400m地点
 「少しペースが掴めてきたかな。これなら何とかスイム迄はフィニッシュできそうだ」。
 スイムの凡そ400m地点。中島大会のスイムコースは片道375m2往復の1.5km。最初の折り返しを終えた辺りのこと。普段、息継ぎは右側でするのだが、今日は左側で息継ぎをしながら泳いでいる。それにすこし慣れてきたのだ


  ウォームアップの時、余りにも右肩が痛く50mも泳げなかった。息継ぎの時、右腕を大きく上げるのが負担になっているようだ。それならば、いつもとは逆の左に顔を上げて息を継ぎ、右腕の動きを小さくしてみるしかない。ただ、何時もと違う方で息継ぎをすると言うのは、バランスもとりづらく、また違和感もある。海で泳ぐ時は、コース設定や波の状況に応じて使い分けられなければならないから、以前はどちらでも息継ぎができるような練習はしていたのだが、ヘッドアップ(※1)ができるようになってからは右だけの息継ぎでも殆ど対応ができるため、呼吸制限(※2)の練習以外ではやらなくなっていた。また中島は浜辺から50m程沖に、浜辺に並行にブイが浮かべられたコースを時計回りに往復する為、息継ぎが右ならブイを見て泳ぐことができる。けれど、今年はそんなことより泳ぎきることが先決。そこでスタート後少し左息継ぎを試してみたら肩の痛みは感じなくて、ぎこちなさはあるものの、何とかなりそうだった。右手は少ししか動かせないので推進力を出せないが仕方ない。

(※1)ヘッドアップ=方向確認の為の行為。海で泳ぐ時は、潮の流れや周りで泳いでいる人の影響で、なかなか真っ直ぐ泳ぐことができません。クロールで泳ぐ時は左右どちらかに顔をあげて息を継ぎますが、何回かに一度、前に顔を上げ、コース上に置かれたブイや遠くの景色(建物や山の特徴などを確認しながら泳ぎます。この顔を前にあげることをヘッドアップと言います。
(※2)呼吸制限=練習方法の一つ。クロールで泳ぐ時は、左右どちらか得意な方で、1・2、1・2のリズムで息を継ぎます。練習のとき、心肺機能を高めれる為に、その息継ぎの回数を減らし、3,5,7回の奇数回ごとに左右交互に息継ぎをすることもあります。ランニングの練習ではマスクをして走る人もいます。高地トレーニングにも通じます。

スタート
 8月21日、10時30分、500人近くの参加者が一斉にスタートした。私とヨーコは、スタート地点の一番浜辺よりから斜め右に最初の折り返し地点を目指す。本来は沖のブイ近くから真っ直ぐ折り返し地点を目指せばロスがないのだが、中島では私たちのレベルの泳力ではそんな所から泳ぎ出せばバトル(※3)に巻き込まれてしまうので、安全策を採って毎年のスタートの定位置にしている。ロスは覚悟で、浜辺沿いに進み少しばらけた辺りで右斜めに泳いでいければバトルに巻き込まれることなく自分のペースで泳げる。ただ、今年は肝心のスタートダッシュができず、かなり手間取ってたどり着いた最初の折り返しだった。

(※3)バトル=スイムスタート直後の闘い。オリンピックや選手権大会など、参加者が数十人くらいのレースでは起こらないのですが、一般の私たちが参加するレースでは、一度に数百人から2,000人近くが一斉にスイムスタートします。このため、スタート直後では、叩かれたり蹴られたり、上に乗っかられたり、という水中バトルが発生します。トライアスロンにはつきものと言われていますが、とても危険です。本来、参加者一人ひとりが自分の泳力に応じた位置からスタートすれば少しは防げるのですが、皆どうしても前の方からスタートしたがるので、こんな状態になってしまいます。
 
 少し出遅れたのはやむを得ない。昨年は24分台で泳げたが、この天候と体調では30分が目標。ところが、私の10mほど先に見慣れた泳ぎをしている人が見えた。ヨーコだ。彼女の泳ぎは左手がリカバリー(水中で後にかき終った手を前に回す動作)の時、真っ直ぐ伸びている(多くの人は肘を曲げている)ので直ぐ分かる。私ですら出遅れ感があるのに、そんなところを泳いでいるようでは彼女もかなり調子が悪そうだ。途中でペースアップをしていくのかなと期待していたが、スイム終了近くまで距離は変わらなかった。これでは今年の好成績は望めない。6月以降、教育実習やその疲れででほぼ2ヶ月、何らの練習もできていなかったので、致しかたないだろう。今の彼女にとっては教員資格を得ることはトライアスロンより大切なことがあるから。何とか左息継ぎにはなれたけど、ヘッドアップの時は痛みが走る。多少のロスは覚悟で前方確認の回数は減らして、とにかくスイムフィニッシュを目指す。

 スイムフィニッシュ時、手元の時計では27分後半。思ったほど悪くはなかった。スイムが終わってほっとするのも、まだウエットスーツが着用義務でなかった頃の佐渡Aタイプでクラゲに刺されながら泳いだ3.8KM以来だろう。トランジッションエリア(米4)では、ヨーコがバイクにスタートしようとしている時だった。一声かけて私もバイク置き場へ向かうしたと報じていた。丁度その時、場内アナウンスで私と同年代のクラスで上位入賞常連者がバイクスタートすると報じていた。


(※4)トランジッションエリア=次の種目に移る場所。バイクやランニングシューズが置かれいます。ここでもたもたしていると、あっという間に何人にも抜かれてしまいます。
 
バイク 
 いよいよバイクだが、実はこちらの方が悩みは深かった。肩に負担を懸けられないので、DHポジション(※5)はさることながら、バイクのバーを握るのも痛い。スタート前の最終チェックの時から降り続いている雨脚も一層強くなってきた。雷はなるのだろうか。どうせなら早めになって欲しい。ゴール1kmくらい手前で雷になられるくらいなら。そんな中でも、皆元気にバイクを漕いでいる。沿道の人達やエードステーションのボランティアの中学生達も雨に打たれながら声援してくれる。きついながらも、最後まで力を尽くさなければ、と改めて思う。バイクでは一体何人抜かれただろうか。多分、400人くらい。何時もは時速30~35kmを目安にしているのだが、今日は向かい風の中では20kmも出ない。バーに手を乗せている程度なので、上体が起きてしまってまともに風を受けてしまう。雨脚も強まり文字通り肌を突き刺す勢い。片道10キロを2往復するので、擦れ違う時お互いを確認しているのだが、今年は最初に1度確認できただけで、後は路面に注意し殆ど下を向いているような状態だった。路面が多少荒れているのがかえって幸いで、綺麗に舗装された路面だとスリップ事故が多発しそうだった。

 
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(※5)DHポジション=バイク(自転車)のハンドル中央部に両手で持つバーを取り付けます。その付け根にあるパッドに肘を乗せることで上体が前かがみになり、スキーのDown Hillと同じような態勢になります。それによって風の抵抗を少なくしたり、体重を乗せ易くなりスピードが上がります。オリンピック等のエリート大会では使用は認められていません。

 ヨーコはバイク途中で何度がドラフティング(※6)を注意され、気持ちが少し切れたとのこと。状況は、前を走っていた男性を追い越したところ、その男性がスピードを上げヨーコをまた追い抜き返したそうです。そこで男性がそのまま先に行ってくれれば問題は全くないのだが、追い抜いたらスピードを落としてしまうため、追い抜かれたヨーコがドラティングポジションに入ってしまう。そこでヨーコが再度追い越したら、また男性がその時だけスピードを上げて抜き返したら落す、ということが何度か繰り返されたとのこと。その状況をマーシャル(審判員)からはヨーコがドラティングをしていると判断されたようだ。

 (※6)ドラフティング=バイクで前に走っている人を風除けに使うこと。後ろの人は楽になるため一般のレースでは認められていません。前を走っている人のバイクの後輪と後ろを走っている人のバイクの前輪が5m以上、左右は1.5m以上離れていなければなりません。後から追い越す人は追い越した時のスピードを保ったまま走ることになっています。

ラン
  私がバイクを終えたときには既に1位の人はゴールしていました。こんなことになったのは十数年ぶりのこと。しかもランスタートの時には女子の1位もグランドに入ってきました。どれだけバイクが遅かったことか。スタートしてから既に2時間14分を過ぎている。ランへ移る頃には雨もほとんど気にならない程度に上がってきた。
 自分の走りより、ヨーコがどれくらいで戻って来ているのか、の方が気になっていた。ランスタート後5分も経たない内に女子の2位が戻ってくるのと擦れ違った。さらに2kmも行かない間に3位、それから随分たって漸くヨーコと擦れ違った。もう3位まで追いつくことはできない距離だった。
 私の方は1km当たり6分そこそこのコペースで、最後まで走りきれた。


ゴール
一升瓶には一升の酒しかはいらない。今年は二人とも何時もより自分達の持つ一升瓶を小さくしか作れなかった。


ヨーコが頂いた年代別1位のトロフィー。来年はもう1度総合での入賞を目指します。
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