野球の試合の得点経過。
 A高 010 000 001 | 2
 B高 000 011 001 | 3
 
 得点経過だけを見れば、3対2で野球では時々ある劇的な9回裏サヨナラ勝ち。
 けれどこの試合、得点経過の裏に隠された、とんでもない幕切れが待ち受けていました。
 今夏の高校野球県予選の1回戦で実際にあった試合結果です。
 その試合経過を追っていくと…。

 先ず2回にA高が1点先取、それを追ってB高が6回裏にに逆転しました。波乱の試合の予兆はA高が逆転される直前の6回の表にありました。A高がノーアウト1塁の場面で、次打者の打球はライナーでレフトへ。B高の選手が突っ込んで来ましたが、見ている分には手前でワンバウンドしヒットのように見えました。ところが判定はレフトフライでアウト。飛び出していた1塁ランナーは帰塁できずダブルプレー。ノーアウト1,2塁の大きなチャンスのはずが一瞬にしてツーアウトランナーなし。A高側から判定に対し抗議がありましたが、覆ることはありませんでした。そしてその裏、B高が勝ち越し点を挙げました。

 B高の投手は7,8回、相手打線を抑え、このまま逃げ切るかと思われましたが、A高9回の表の攻撃。1点負けているままでツーアウト2塁。次打者の打球は三遊間を破ってレフト前へのヒット。2塁ランナーは3塁を回って一気に本塁へ走りました。前進守備だったレフトからは好返球が送られ、ホームベース上、タイミングはアウトと思われましたが、ランナーが上手く回り込んでタッチをかいくぐりセーフ。これで土壇場で同点になりました。
 
 そしていよいよ9回裏。B高の先頭打者がフォアボールで出塁。このような緊迫した試合ではフォアボールやエラーでランナーを出してはいけないのが野球のセオリー。そして野球には攻撃側にも守備側にもセオリーと呼ばれる作戦があります。そのセオリーがこの同点で9回裏、しかも夏の甲子園大会の県予選と言う後のない場面で経糸横糸のように絡み合って行きます。
 守る側からすればいやなパターンで出してしまったランナー。攻めるB高は1点取れば勝ちですから、セオリーからすれば送りバントでランナーを2塁に進めることになります。ところが実際にはセオリー外で次打者は打って出てライト前にヒット。これでノーアウト1,2塁。ここでA高はセオリーに戻り送りバントの作戦に出て成功、ワンアウト2,3塁の場面を作りました。
 今度は守っているA高のセオリー。1点取られれば負けですから、敬遠のフォアボールで塁を埋め守りやすくすることを考えます。塁を埋めておけばフォースアウトが取れたり、ダブルプレーを取れたりとピンチを凌ぎやすくなります。その一方で、フォアボールやデッドボールで押し出しとなってしまう危険も伴います。

 セオリー通り敬遠のフォアボールでワンアウト満塁となった次打者の3球目。A高投手の投げたボールはB好打者の上腕部に当たり、一瞬これで押し出しゲームセットかと思われました。しかし審判の判定はただのボール。打者にボールを避ける意思がないと判断されてのことでした。デッドボールになるためには打者はぶつかりそうな投球を避ける動作をしなければならないからです。見ている分には、わざと当たったわけではなく避けるに避けられなかったようにも見えましたが、当然、審判の判断が最終決定です。そして本当の幕切れはその直後に来ました。それはインフィールドフライ。守りやすくとセオリー通りで選んだ満塁策がもたらした結末でした。

 インフィールドフライ。これは野球にあるルールで、アウトカウントがツーアウト以外で、ランナーが少なくとも1塁にいる場面で適用されます。この場面で打者が内野フライを打ち上げた時、審判が判断して打球を野手が捕ったり地面に落ちる前に打者にアウトを宣告します。普通、フライは野手が捕球して初めてアウトになるのですが、上記のような場面ですと、野手が故意に落球してランナーを二人以上アウトにすることも可能なのでそれを防ぐために設けられたルールです。フライが上がるとランナーは塁を大きく離れることができないため、落球されても次の塁に走る間に送球されアウトになる可能性が大きいためです。

 そしてそのインフィールドフライが、この大事な場面で出ました。ワンアウト満塁で打者が打ち上げた打球はショートへの内野フライ。この時点で審判はルール通りインフィールドフライを宣告しました。これでツーアウト満塁で次の打者が打席に向かいました。ところがこの時突然、3塁ランナーが本塁へ向かって走り出しました。隙をつかれたA高野手は本塁へ送球することなく、タッチアップでランナーの生還が認められ、これが決勝点。その瞬間にB高の勝利となりました。

 満塁策をとった時点でのリスクは押し出しだけと思っていましたが、こんな形で決勝点を取られるとは。
そして何故、インフィールドフライで打者はアウトになったのに得点が認められたのか。インフィールドフライは、宣告された時点でもプレーは続行していますから、このような時にも攻撃側のランナーはタッチアップで自身の危険を冒しても次の塁を狙うことができます。タッチアップとはフライが補給された後一度ベースに戻りそれから次の塁へ向けて走ることがです。実際の試合で良くあるのは3塁にランナーがいて打者が外野フライを打った時、外野手が捕球したことを確認した後、3塁ランナーがホームへ走り、外野から返球されタッチされる前にホームベースに触れれば得点が認められるケースです。
 
 ですからこの場面、もしセオリーに反し満塁策を取らずに1塁が空いていたら、インフィールドフライは適用されません。またセオリーとしては、A高の野手(ベンチにいる控え選手も含め)は、ランナーの動きをよく見てタッチアップの気配があればそれに備えた次の動作をしなければなりません。或いは一度タイムをかけてプレーを中断させる必要があります。選手がこのようなルールや基本を知らないはずはないので、ほんの一寸した隙が生んでしまった結果なのでしょう。それらを怠ってしまいました。一方で、ルールをしっかりと頭に叩き込まれ、セオリー通り相手の隙を見逃さなかったB高選手たちのファインプレーとも言えるでしょう。
 A高側からは、かなり猛烈な抗議が繰り返されましたが、ルールとしても認められるはずがありません。選手から審判に対する激高した声も聞こえてきました。試合終了後の挨拶も碌になされませんでした。A高の、特に3年生の気持ちもわからないわけではありません。気持ちの整理もつかないかも知れません。しかし、ルールはルールです。最後の最後でセオリーを忘れてしまった選手たち。責めるには酷と思いますが、審判に当たる前に自身のプレーを振り返ってもらいたいと願います。

 野球だけでなく、何事にも済んでしまったことに「…たら」はありえません。それでも、この試合には幾つかの「…たら」があります。
 6回表のレフトフライがきちんと判定されていたら。 
 9回表が間一髪アウトだったら。
 9回裏に満塁策を取らず1塁が空いていたら。
     そしてデッドボールが認められていたら。
 そうしたら、後味は違っていたかも知れません。
 それでも、審判も選手も監督も応援団もみんな「人」。誤ちも犯せば隙もある。だからこそ「たら」はないのかもしれません。

 因みに、A,B両校とも優勝候補の最右翼とまでは行きませんが、甲子園出場経験のある強豪校で、どちらが勝っても上位進出が期待され1回戦で対戦させるには惜しいチーム同士でした。しかも監督同士もかって同じ社会人チームで同時期にプレーし、練習試合も良く行い選手同士も顔なじみのチーム同士だったそうです。B高の選手たちはA高の選手たちのためにも勝ち進んで甲子園で優勝すると誓っていました。ただ、B高の次の対戦相手は、今夏キヨタが一番応援している学校が対戦相手なのでちょっと複雑。

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