「春潮に 神代も霞む 熊野灘」
東京~徳島フェリー乗船記の2

 大台ケ原(オオダイガハラ)。三重県と奈良県境、紀伊半島の南東部にある標高1,400~1,600mの山々が連なる東西約5㎞の台地です。ここは南東に20㎞弱しか離れていない太平洋の熊野灘から急峻な台地の斜面を吹き上げる湿った風の影響で、年間降雨量は本州では最多と言われています。

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かなり霞んでいますから、写真では見づらいと思いますが、奥にある薄青く横に広がった台地が大台ケ原です。

深田久弥により日本百名山の一つに挙げられていますが、名前だけしか知らなかった大台ケ原を初めて望んだのは20年ほど前。大台ケ原の北を走るJR関西本線の車窓からでした。遥か遠くからではありましたが、夕日に浮かび上がった広大な台地を神々しく感じたものでした。高天原に擬せられる場所は全国に多数ありますが、大和(飛鳥)からも遠くはないこの台地もその一つかな。古代から崇められていたのでしょうか。江戸時代末期には既存の霊場にはない手つかずの森を求めていた行者達が、新たな修行の場として訪れていたとの記録も残っているそうです。
 ところが、その台地も1億年前は海底だったそうです。太平洋にある海底プレートが、日本列島側のユーラシアプレートの下に潜り込むことでユーラシアプレートが押し上げ千数百万年前に陸地になった、とのことです。そしてこの大台ケ原のある紀伊半島は200万年前から現在にかけ1,000m以上隆起したとされています。紀伊半島と言うと多湿温暖な印象もありますが、2万年ほど前の氷河期ではツンドラ地域であったとも推測されています。氷河期が終わると台地で生育していた針葉樹も標高の高い所へ移動しその後消えてしまったそうです。現在残っている樹林は大台ケ原の氷河期から現在にかけての気候変動の生き証人でもあります。そして大台ケ原の成り立ちを知ることで日本列島の変遷を覗うこともできそうです。飛鳥人はどのような思いで見上げていたのでしょうか。そのような厳しい自然環境の中で生成された大台ケ原は古来「魔の山」「迷いの山」として恐れていましたが、近年はドライブウェイの開通などで手軽に訪れる人が増えることによる弊害や大規模造林などにより様相が大きく変わりつつあるようです。日本国内に限らず、世界遺産や自然遺産に指定された場所が安易な観光地となり、本来残されるべき姿やあるべき姿が失われてしまうことは哀しいものです。

 その大台ケ原を、フェリーから眺めることができました。「朝ぼらけ 有明の月と みるまでに …」との和歌もありますが、有明埠頭を出航し一夜明けた太平洋。天気晴朗なれど霞深し。遠く薄青く霞んでしまった大台ケ原は、残念ながら初めて目にした時ほどの畏怖は感じられませんでした。それでも今ここから眺める台地の大きさには圧倒されました。 

 その後、フェリーは台風情報でしばしば見聞きする潮岬を回ります。ここも20年ほど前に出張で立ち寄った場所で、街中の至る所で「本州最南端の○○店(屋)」と言う看板を見かけた記憶があります。民謡『串本節』では「ここは串本 向かいは大島 中をとりもつ巡航船」と謡われていますが、今は串本と大島は白い大きなアーチ状の橋が結んでいます。

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左側の白い塔が潮岬の灯台。

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低い台地上に広がっているのが潮岬。昔は独立した島だったような印象です。

その岬を回ると瀬戸内海の入口。ここから見る和歌山の山並みは、瀬戸内海から見る四国山地と異なり随分たおやかな印象です。四国の石鎚山系ほどの高さもなく、また海岸線からの斜面も緩やかです。穏やかな気候風土を感じられ、愛媛や静岡と並ぶ蜜柑の産地であることも納得。潮風に吹かれながら時も経ち、徳島の眉山(ビザン)も大きくみえるようになりました。人の眉の形に似ているところから名づけられた小高い山。徳島のシンボルの一つです。

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紀伊半島の山々。

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写真中央から右側に広がっている一番奥の山が眉山。

そして前夜19時30分に出航したフェリーは予定通り14時30分に徳島港に着岸。「退屈するかな」と思っていましたが、やはり島国日本、海上から眺める景色は陸上移動や飛行機から見る景色とは異なる美しさがあり、のんびりした船旅を満喫することができました。上陸後は徳島から今治まで、四国を横断する2時間半ほどのドライブです。

徳島市から四国中央にかけては吉野川沿いに高速道路が走っています。30年近く前に吉野川を下る10㎞の遠泳大会があり2度目のチャレンジで完泳できたことがありました。今では泳ぐことのできる川も殆どなくなりました。この川も残しておきたい自然の一つです。
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